はじめに
去る2021年8月26日、ザ・シチズンからメカニカルモデル・キャリバー0200として三作(白・黒・青)が発売された。
興味がある方は発売直前に執筆した国産ラグスポ発売目前!【ザ・シチズン】メカニカル Caliber0200 について - しろくま腕時計紹介店もご覧いただきたい。
実物を試着した時ビビッときたので即予約を入れた。何だかんだ言っても、買う買わないは最初の直感が大切。
白は数量限定で革ベルトタイプのみ。今回はブレスレットタイプが気になっていたので黒と青の二択になったが、これが非常に難しい決断だった。
シチズン特有の電鋳手法を用いた砂漠模様の黒ダイヤルか?シチズンもメディアも発表から終始一貫して「ブラック推し」だったように思える。カタログでも何でも表紙は常にブラックダイヤル。男らしくて良い。
それとも、サンレイ仕上げの青ダイヤルか?キャリバー0200の青ダイヤルは実に美しい色味をしている。
悩んだ末、黒ダイヤルは手持ちのコレクションに既に複数あったこともあり、選んだのは青ダイヤル(NC0200-81L)。黒ダイヤルも色違いで揃えられたらな。
以下、筆者がキャリバー0200の購入に至った理由と、手に入れた実物の感想を記したい。
なお、実物の開封動画をYouTubeにアップしているので、リアルな質感を併せてご覧いただきたい。
【スペック】
Cal.0200/機械式時計/自動巻き+手巻き/精度:平均日差ー3~+5秒/駆動時間:約60時間(最大巻上時)/振動数:28,800回/時/ケースサイズ:40.0mm(設計値)/ケース厚み:10.9mm(設計値)/サファイアガラス(クラリティ・コーティング)/5気圧防水/ステンレス/石数:26石/シースルーバック/価格60万5000円(税込)
ザシチズン・キャリバー0200の購入に至った理由
整理してみると、五つの要素が重なり合った結果、購入を決めたように思う。
- 国産のラグスポ・・・国産・高級・機械式時計をいつか手に入れたいと思っていた。また別の話として、ケース・ブレスレット一体型のラグスポをいつか買おうとも思っていた。そうしたところ、「国産」で「ラグスポ」という二つの欲しい時計像を同時に満たしてくれるモデルが不意に登場した。それでかなり注目していたというわけだ。
- 洗練された高級感・・・当ブログでお馴染みの「時計屋放浪記」にて数々の高級機械式時計を物色してきた筆者から見て、キャリバー 0200の出来栄えは同価格帯のスイス高級時計と比べても全く遜色ない。それらを凌駕するといっても過言ではない。エッジが効いた立体感のあるケースは随所に鏡面仕上げを持ち、ケース全体から光を多彩に反射させる。ダイヤル上のバーインデックスや針も非常にキレがある仕上がりとなっている。そのキラキラ感はミラーボール的なギラギラ感とは趣が異なり、日本人好みの控えめな感じにまとまっている。
- 適度な直径と11mmを切る薄さ・・・個人的には直径36〜39mmあたりが本来好きだが、スポーツウオッチであれば直径40mm程度でもまあいいと思う。その意味でキャリバー0200の直径は40mmで許容範囲。キャリバー0200のサイズ感で惹かれたのは「10.9mm」という薄さだ。この薄さであれば袖口に難なく収まりエレガントな用途にも十分使える。そして重さは、ブレスレットの厚みが比較的薄いためか軽い部類に入るだろう。正確に測っていないので分からない。装着感は良好といえる。
- 新開発ムーブメント・・・詳しくはシチズンの公式ウェブサイトにあるので割愛するが、一言で表せば、シチズンがマニュファクチュールとしての総力を上げて作り上げたムーブメントであるということだ。日本の物づくりに誇りを持っている人であれば惹かれるものがあるはずだ。
- ノンデイト・・・日付機能なし、これは非常にグッドポイント。日付機能は一本しか時計を持たない人にとっては便利ではあるが、複数のコレクションを持つ人にとっては、止まった時計の日付を一々合わせる作業は大変手間になる。また、デザイン上の問題としてアシンメトリーが避けられずバランスを崩す原因になる。
評価(レビュー)
では、せっかく実物が手元にあるので、写真と共にその魅力を存分にお伝えしていきたい。
先からアレコレ述べてきたが、この一枚の写真だけでも魅力が伝わるはず。
見て欲しいのは、立体的でキレキレのケースからブレスレットへの一連の流れ。
どこにも余計な装飾がなく、形と表面の加工方法だけでここまで質感を表現できているのが素晴らしいと思う。
まるで研ぎ澄まされた日本刀のよう。
ブレスレットには筋目加工。繋ぎ目の側面は鏡面仕上げになっている。それで立体感が出ている。
堂々たるバーインデックスとドフィーヌ針、6時位置のスモールセコンド、バウハウスにも通ずる簡素なデザインのダイヤル。文字だけ追うと極めてクラシカルなドレスウオッチのよう。
しかしこれはドレスウオッチというべきなのか。ロイヤルオークがスポーツウオッチならば、これもスポーツウオッチと分類すべきだろう。ドレス的スポーツウオッチ。
スポーツウオッチを、スポーティな方向とは真逆、クラシカルなドレスウオッチに寄せるという新しい試み。
シースルーバック仕様になっている。
汗でベタベタになるときがあるが、やっぱり機械が見えるのは嬉しい。
シースルーバックからしょうもないムーブメントが見えても仕方ないが、ラジューペレが担当した装飾加工も含めてキャリバー0200のムーブメントは見る価値が十分ある。
自然光の下でサンレイダイヤルが本領を発揮。
なお、着用者である筆者のリストサイズは17.5~18mm。
光と影のハーモニー。誰しも何か感じるものがあるはずだ。
素晴らしい時計はシンプルであり、光と影だけでここまで魅力を表現できる。
美味しい白米には究極は味噌汁と漬物だけあればいいのと同じ。
とろけそうなステンレススチールの風合い。
ケースはまるでプラチナのように白く鈍く輝く。
シチズンからここまで優れた機械式時計が出てくるとは。
おわりに
キャリバー0200はウェブ上で見るだけではその質感の高さが十分に分からない。少しでも気になる人は、是非、店頭で実物を見て、触って欲しい。しかし、店内照明の下で見るのと自然光の下で見るのとは、これまた全然違う。それは所有者だけの特権。
キャリバー0200は今のところ、特定店のみでの取扱いモデルとなっている。また、筆者の情報収集の結果、どの特定店についても第一弾の入荷数は極めて少ない(1本、2本とかのレベル)こと、その後の入荷はもっと先になることも分かっている。シチズンの製造も時間がかかるようだ。これは久々の機械式であり量産体制がまだ整っていないこと、ラジューペレによるスイスでの作業が必要になること、クロノメーターを超える精度で出荷すること等が理由と推測される。
つまり、キャリバー0200は、いざ買おうと思っても、もう買えない状況になっているのかもしれない。いきなり量産化が進むとも思えないので、この状況は当面続くのではないか。キャリバー0200の購入を真剣に検討されている方は一日でも早く思い切って行動することをお勧めする。
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