はじめに
筆者が所有し愛用する腕時計について語る。
今回はチューダーブラックベイフィフティーエイト(以下「BB58」という)。
本記事の項目
本記事の目次は以下のとおり。
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①チューダーブランドの魅力
1.ロレックスにはない魅力
ロレックスとチューダーは創業者が同じである。
かつて、ロレックスの一部部品はチューダーで使用されていた。
古いチューダー(チュードル)時計のリューズやケースバックの刻印にロレックスと入っている場合がある。
しかしチューダーは現在、ロレックスとは別路線で、独自の確固たるブランドを築いているといわれる。
ロレックスは腕時計の実用性追究を基本としている。
実用性のためにあらゆる改良をするし、阻害する要素を排除していく。以前サブマリーナーやGMTマスターのベゼルはアルミベゼルだった。
ベゼルが経年変化で退色している様がヴィンテージマニアの心をくすぐる。
しかし、ベゼルが変色したり傷がついていくと本来もつ視認性がどんどん低下していく。
ロレックスは結局それらのベゼルをセラミックにした。
セラミックは耐傷性が比較にならないほど優れているし、アルミのように退色して色褪せることはない。
(※上の画像のジュビリーブレスレットは何だという質問をよく受けるのでご参考まで本記事の末尾にリンクを貼る。純正品ではない。)
ほかには「エバーローズゴールド」というロレックスが独自に開発した18Kピンクゴールド素材がある。
従前のピンク(ローズ)ゴールドは銅を比較的多く含有しているため経年で変色する可能性があったが、それを改良したものになる。
一方、チューダーは古き良き時代のヴィンテージ風もつくるし、ロレックスがまだ足を踏んでいない領域のモデルもつくる。
ここ最近でブロンズ、シルバーといった変化しやすい素材の新作を投入してきた。
経年変化を肯定的に捉えて楽しんでいくという趣旨の提案だが、現在のロレックスのスタンスとは明確に異なる。
実用性追究に徹するロレックス。
ロレックスがやらないことを拾い上げ、ロレックスがやれないことに果敢にトライしていくチューダー。
ロレックスとチューダーはいわば車の両輪のようであり、各々の良さを知れば、どちらもより深く楽しめる。
2.チューダーのラインナップ(全体)
チューダーといえばブラックベイだが、それも含めて全体的に整理してみよう。
【ドレス系】
【スポーツ系】
シンプル
コンプレックス
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チューダー ブラックベイ コレクション:ブランドの顔
-
チューダー ぺラゴス:本格スペックのダイバーズ
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チューダー ヘリテージ クロノ コレクション:人気クロノグラフの復刻版
3.「ブラックベイシリーズ」
チューダーの顔である「ブラックベイ」を冠するモデルは多岐にわたる。
ブラックベイの核はダイバーズウオッチである。
ブラックベイにはクロノグラフやGMTもあるが、いずれもダイバーズのブラックベイから派生したモデルと位置付けられる。
チューダーのダイバーズは41mm径以上が基本で、上記のとおり種々のモデルが存在しているが、いずれもラージサイズとして一括りにして構わない。
以上を踏まえてブラックベイシリーズを整理する。
【海(ダイバーズ)】
- ブラックベイ スタンダード(ラージサイズ)(上記3から7)
- ブラックベイ 39mm(BB58)(上記1)
【陸(クロノグラフ)】
- ブラックベイ クロノ(上記2)
【空(GMT)】
- ブラックベイ GMT(上記8)
②ダイバーズ時計なのにシンプルかつ上品である
「ありそうでなかった」ダイバーズウオッチ
一般的に、ダイバーズウオッチはサイズが大きく、ケースやダイヤルがゴテゴテしており、無骨でマッシブに見える。
マッシブなものではなく、より上品で、シンプル、コンサバティブなものを好む人はマッシブなダイバーズウオッチを敬遠するだろうし、仮に購入したとしても補欠時計になってしまうだろう。
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(※デカ厚時計の代表格 パネライ もちろんこれはこれでカッコいい)
BB58はダイバーズウオッチでありながら「腕にしっかり収まるサイズ感」と「洗練されたクラシカルデザイン」を備えている。
今までダイバーズに興味がなかった人でも「このダイバーズなら欲しい」と思わせる仕上がりとなっている。
腕にしっかり収まるサイズ感
着用者の体格と時計が不釣り合いだと不恰好に見える。
たとえばオーバーサイズの服やパンツを着こなすのは難しい。
腕時計にも同じことがいえるのではないか。
最近の日本では時計の大小は40mm径が基準になっていると考えられるが筆者は疑問に思っている。
そもそも大小は体格との関係で決まるので一概に言えないが、たとえば手首周りが17.5cmから18mmの筆者では、自分が着けるなら38mm径を基準に大小を判断している。
BB58は39mm径。
ダイバーズといえば40mm径オーバーも多い中、いい線をついている。
直径も然ることながら厚みも重要なポイント。
12mm以下だと比較的薄く装着感がいいものが多いところ、BB58(SS製)の厚みは11.9mmと、これまたいい線をついている。
BB58以外で、39mm径・厚み12mm以下のダイバーズウオッチを見つけるのは難しいだろう。
洗練されたクラシカルデザイン
結局どんな服装でも合わせやすいシンプルでクラシカルなものが重宝される。
デザインや色遣いがうるさいものはいつか飽きる。
ダイバーズウオッチというジャンルのマスターピースはロレックスのサブマリーナー・ノンデイト(日付無し)だ。
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これはシンプルだし、クラシカルなので、もちろん最高の一本に違いない。
もっとも、ロレックスによるマイナーチェンジの過程で次第にラグジュアリー感が増してしまい、もう少し安っぽかった頃の道具感というものが失われてしまった。
(実際やらなくても)アウトドアで傷など気にせずガシガシ使えたり、その辺に雑に置いておいたりしても違和感がないような「道具感」というものが男心をくすぐる。
現行サブマリーナーはラグジュアリーさと引き換えに、そういったものを捨てざるを得なかった。
現代の最新スペックで、ヴィンテージサブマリーナーのようなものがあれば、それはつまり最高だと思わないか。
まさにそれがBB58ではないだろうか。
BB58はただ古きものを右から左に蘇らせたわけではない。
具に観察すれば、ケースや文字盤の仕上げがよく、細部までしっかり丁寧に作り込まれていることが分かる。
そして、ヴィンテージ時計を知らなくてもどこかノスタルジーを感じるような出来になっていると思う。
BB58は逆回転防止ベゼルにスッキリした目盛り、視認性の高い文字盤などダイバーズウオッチのイロハをしっかりおさえている上に、ノンデイト、リューズガードがない所も飾り気がなく、スッキリしている。
フェイクではあるがリベット風ブレスレットもいい味を出している。
古き良きのエッセンスを取り入れつつ、古さを全く感じさせない「洗練されたクラシカルデザイン」といえるだろう。
BB58のステンレススチール(SS)製には①ブラックダイヤルと②ブルーダイヤルの2種類がある。
単なる色違いといえばそれまでだが、各々のカラーリングから来る独自の魅力がある。
BB58ブラックダイヤル
「洗練されたクラシカルデザイン」というのは、まさにブラックダイヤルモデルを念頭に表現したものである。
引き締まったブラックダイヤルに、経年変化で焼けて茶色掛かったように見えるゴールドレターに心が躍らない人などいるだろうか。
まさに現代の最新スペックで楽しめるヴィンテージサブマリーナー。
もちろんヴィンテージのロレックスサブマリーナーは素晴らしいが、中古、ヴィンテージであることに伴う様々な不安やハードルがあり、簡単に足を踏み入れることは憚られる。
BB58は気軽に楽しめてよいのである。
BB58ブルーダイヤル
ブラックダイヤルの後年に出たのがブルーダイヤル。
ブラックはヴィンテージライクな雰囲気が特徴だが、ブルーは色遣いを現代的に仕上げたことでモダンでクリーンに見える。
③BB 58と私(購入経緯と使った感想)
BB58はまず2018年にブラック、次いで2020年にブルーが登場した。
ロレックスの技術が詰まった高性能なムーブメントとそのデザインやサイズ感でたちまち大人気モデルとなった。
店頭でショーケースに並ぶことはなく(2021年現在)、「BB58ありますか?」と聞かないと出てこない。
入手するにはいわゆる「マラソン」を要する。
何度も探しに行く覚悟が必要だが、ロレックスほど難易度は高くないだろう。
筆者は2020年に登場したブルーを見てかなり気に入って、発売以来、正規店を何度か見に行っては「残念ながら在庫を切らしております」の回答に撃沈していた。
やはり入手は簡単ではなかった。
ある日、BB58のブルーが欲しいと伝えたところ「ブラックならあります」と言われてブラック(ブレスレット版)を案内してもらった。
しかしその時はブラックにそこまで惹かれていなかったので購入は見送った。
その後、またブティックを見に行ける機会があり、BB58のブルーを探しているが中々見つからないと伝えたところ、また「ブラックならあります」と言われて、今度はブラックのファブリックストラップ版を案内された。
一番欲しかったのはブルーだったが、担当者がかなりアツくブラックやファブリックストラップの魅力を語ってくれた。
担当者の話を聴いているうち、次第にブラックも良いなと思い始めた。
出来ればブレスレット版が欲しかったが、これも何かの縁だと思い購入に至った。
買う気がなくても担当者の熱意で気持ちが揺らぐことがある。
そういう時の買い物はすごく楽しいし、記憶にも残る。
ファブリックストラップ版にはあまり期待していなかった。
しかし実際に着けてみると、とにかく軽くて、手首に吸い付くような装着感があった。
しっかりとしたスーツに合わせるのは難しいが、ジャケパンなら難なくキマる程度にはシンプルだと思った。
それにこのファブリックストラップは、バチカン教皇領の法衣の製造者がシャトル織機で非常に手間と時間をかけて作っているということも知った。
ブラックベイ58はファブリックストラップ版とレザーストラップ版が同じ定価設定であるが、よく知らない人にとっては「ファブリックストラップがなぜレザーストラップと同じ価格なんだ」と思うのは仕方ない。
しかしBB58のファブリックストラップはその辺のものとは比べ物にならないくらい目が細かくて、触り心地が良いので、納得。
すっかりBB58にハマったので、次はストラップを充実させようと思い、チューダー純正のレザーストラップも正規店で発注した。
安くはなかったが、表面がスエード調だったのが斬新だったのと、バックルにチューダーのロゴが入っているのがよかった。
ファブリックストラップも良かったが、レザーストラップもまたよかった。
その後しばらく経って、BB58のブルーをやはりゲットすべく、再びチューダーを訪れる機会があった。
ちょうどこの時は散髪屋に行ったら1時間待ちだと言われて、時間つぶしにチューダーに寄ったのであったが、運命とはそういうもので、その時にたまたまブルーのブレスレット版の在庫があって案内してもらうことができた。
筆者は現在、BB58はブラック(ファブリックストラップ・レザーストラップ)とブルー(ブレスレット)の両方を持っている。
ブラックのレザーベルトをブルーに付けたり、ブルーのブレスレットをブラックに付けたりして楽しんでいる。
なお、ブラック用のレザーストラップやファブリックストラップは、BB58ブラック本体を持っていなければ購入不可(BB58ブルーの方もまた然り)。
おわりに
BB58は洗練されたクラシカルデザインというだけあって、カジュアルシーンはもちろんのこと、ビジネスシーンでも悪目立ちしない。
どんな時でも安心して着けられる。
ロレックスのように見てわかりやすい高級感はない。
「チューダーは安っぽい」という評価もある。
それはある意味間違っていないが、肯定的に表現すれば「ツールウオッチとして気兼ねなく使える」というのが、BB58に限らず、チューダー全般に通じる正しい認識・評価だと思う。
チューダーは一般の人はまず知らないブランドだから相手に気を遣わず着けることもできる。
定価はサブマリーナーの半額以下の設定であり、頑張れば手に入れることができる。
中古市場では多少のプレミア価格がついている。
資産価値を気にして時計を買うわけではないにせよ、資産価値が高いに越したことはない。
ブラックとブルー。
両方持っている立場で言えば、二本それぞれ違う魅力がある。
服装のテーマカラーによって使い分けるのも楽しい。
SS製のBB58として現在出ているのはブラックとブルーの二つであるが、チューダーはBB58シリーズの拡充に力を入れているようなので、将来的にはSS製で更に新作が出るだろう。
その時はまた買ってしまうのだろうか、、、
・・・
※筆者のBB58に取り付けているジュビリーブレスレットはこちらから。
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