はじめに
3か月前、パテックフィリップというメーカーのカラトラバ5196という機械式腕時計を購入した。
カラトラバ5196の18Kゴールドモデルにはイエローゴールド・ピンクゴールド・ホワイトゴールドの三種類があるが、筆者が購入したのはイエローゴールドのもの。
その時のことは【パテックフィリップ】カラトラバ 5196J購入 究極の三針ドレスウオッチ - しろくま腕時計紹介店にて記している。
今回は購入から3か月が経った現在の所感を記しておきたい。
パテックフィリップとは
そもそもパテックフィリップとはスイスにある時計メーカーの一つ。
Patek Philippe | パテック フィリップの公式ウェブサイト | 紳士・婦人用ラグジュアリー・ウォッチ
1839年、アントワーヌ・ノルベール・ド・パテックと、フランソワ・チャペックによって設立されたパテック・チャペック社が前身となる。
両者の契約は数年後解消され、パテックとチャペックに分裂。パテックの方は、ジャン・アドリアン・フィリップと出会い、その後Patek Philippe(パテックフィリップ)となり、現在に至る。なお、チャペックの方は、Czapek(チャペック)を設立するも、創業二十数年で消滅した(現在あるCzapekは2015年頃に興った新興ブランド)。
パテックフィリップは、ロレックスやオメガのように一般に広く知られたブランドではないが、自他ともに認める時計ブランドの頂点であるとされており、時計愛好家であれば知らない者はいない。
パテックフィリップの良さは次の一文に凝縮されている。
比類のない手仕上げの技術 パテック フィリップの時計における最も素晴らしいことは、ケース、文字盤からムーブメントに至るまで、世代から世代へと技術を受け継いできた専門の熟練した職人たちによって手仕上げされているということです。
カラトラバとは
パテックフィリップのラインナップは大きく分けると以下のとおり。
- コンプリケーション
- カラトラバ(丸型ドレスウオッチ)
- ゴンドーロ(ラウンド型以外ドレスウオッチ)
- ゴールデンエリプス(楕円型ドレスウオッチ)
- スポーツタイプ(ノーチラス・アクアノート)
- Twenty~4(レディース)
パテックフィリップといえば?
「そんなもんノーチラスに決まってんだろ!」というヤツは、何も分かっていない。
パテックフィリップは「パテック フィリップのスタイルを象徴する最も美しいモデル」と説明している。
パテックフィリップの公式HPでは、カラトラバについて次の説明がなされている。
カラトラバは1932年の発表以来, クラシックの真髄を体現する伝説的なコレクションです. タイムレスな紳士・婦人用ラウンド・ケースのラインは, ドイツの建築・装飾芸術運動バウハウスから直接のインスピレーションを受け, 《機能がフォルムを決定する》という哲学を忠実に反映しています. 超薄型, またはサファイヤクリスタルバック付のケースに《クルー・ド・パリ》, ラウンド・ベゼル, またはダイヤ付ベゼルと, バラエティ豊かなそのデザインにもかかわらず, カラトラバは一目でそれと分かる個性を持っています. 時代と共に進歩し, 発展を続け, 常に新しい特徴を付け加えつつも, 時を超越したクラシックであり続ける, その力こそは, パテック フィリップを特徴づける卓越性の追求をこの上なく体現しています.
ドイツのバウハウス思想を取り入れた無駄のない造形。
優れたものほど、シンプル。
優れたものほど、分かりやすい。
「時を超越したクラシックであり続ける」という一文からパテックフィリップの揺るぎない自信と並々ならぬ強い意志が伝わってくる。かっこよすぎる。自分の仕事に対してもいつかこんなことを言ってみたいものだ。
カラトラバ5196の紹介
カラトラバ5196の細部まで見て行きたい。
個人的にカラトラバ5196の中で最も好きなパーツは「針」。
ドフィーヌ型と呼ばれる形で、長く、太く、鋭い。威風堂々としたところが好きだ。
よく見ると尋常でないほど磨かれているのが分かるだろうか。
砲弾型アワーマーカーは抜群の安定感を誇る。
ミニッツマーカーは控えめながら18Kゴールドがドット状に埋め込まれている。
余計な文字も見られない。「SWISS」の一単語で全てが伝わる。
カラトラバ十字。
ヨーロピアンな美しいデザイン。これが手作業で仕上げられるにはどのくらいの時間と労力がかかるのだろうか。
リューズ側面もあり得ないくらい美しく磨かれている。
ケースの側面は筋目仕上げになっている。
一本、一本、まっすぐ、丁寧に。職人技の極み。
レザーストラップも最高の質感。
革は光沢があって、しなやか。
しっかりとした糸で、極めてしっかりと縫製されているのが分かる。
カラトラバの最大の特徴とされるラグとケースの一体性。
ケースからラグにかけての滑らかな曲線が見事。
ラグの上面の磨きも美しい。
尾錠も最高の仕上げ。
18Kゴールドが今にもとろけそうな美しさを見せている。
徹頭徹尾、すべてが完璧なのがパテックフィリップ。
購入から3か月の所感
カラトラバ5196を購入してから3か月経った。
2月に購入してから4月ころまでは頻繁に付けていた。
世界最高の腕時計を着けて仕事をすると、仕事のクオリティも2倍3倍に高まるようだ。
ケース自体の防水性が低いため、汗ばむ季節になると使用を控えざるを得ないので、涼しい季節までお預けとなる。
インターネットでいつでもカラトラバ5196の写真や動画を観ることができる時代だが、いつでも細部まで観察することができるのが所有者の特権。たとえばケースサイドのヘアラインも肉眼・拡大鏡で見るともっときれいに見える。
それに、酒の肴にカラトラバ5196を眺めることもできる。それは最高に贅沢な時間。
カラトラバ5196のいいところ。
それはどこを見ても一切の手抜きがないところ。
手抜き仕事に、価値はない。
この時計を眺める度「お前は手を抜いて仕事していないか」と無言で諭される。
とにかく息を呑む美しさ。
それがカラトラバ。
それがパテックフィリップ。
おわりに
カラトラバ5196はパテックフィリップの現行ラインナップにおいて最もシンプルで、デザイン的にもある意味つまらない腕時計である。
もっと分かりやすい高級なもの、流行りのスポーティーなもの、大人気でリセールバリューが高いものなど、魅力的な時計はたくさんある。そんな中で、いくらお金があっても、カラトラバに大金を費やすのは躊躇されるところと思う。
しかし、敢えてその豊富な選択肢の中から、様々な誘惑を振り切って、カラトラバ5196を選ぶことができた自分を褒めたいと思う。
よくやったと。
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