D男が求める腕時計
(ピロロロ ロローン、ピロリロ リン ♪ )
いらっしゃいませ。
突然すみません。腕時計の相談に来ました。
(D男は高卒で地元の会社に就職して、入社5年目を迎えた22歳のサラリーマン。ずっと実家暮らしで質素に暮らしてきた)
D男さんは今は腕時計をしておられないようですね。
ええ。でもやっぱり腕時計はあった方が良いとなりまして。
といいますと?
実は最近、異動先の部署で、お客様と直接やり取りすることが増えましてね。スマホを出してチラッと時間を確認したら「スマホいじって、最近の若いもんは!上のモンを出せ!」とか散々言われまして。
それは最近増えている「カスタマーハラスメント」ですな。
上司には「たとえ時間を見るためであっても、話を聞いていないと受け取る人もいる」と指導されまして。
まあ確かに。話の内容がどうでも良すぎてスマホをいじる場合だってありますもんね笑
その上司のことは尊敬しているので、反省はしましたよ。その後しょぼくれてたら上司が軽く一杯と飲みに誘ってくれて「機械式の腕時計はロマンがあっていいぞ」と。
(拙稿「クオーツ腕時計にはない、機械式腕時計の魅力とは」参照)
いい上司ですね。D男さんはどんなイメージの時計が欲しいですか?
ロマンってよく分かりませんが、機械式のメカな感じに惹かれまして。この機会に購入を考えてみようかなと。流行を追うのは嫌なので。流行り廃りがない、レトロなデザインがいいですね。
レトロな感じですか。でしたら、、、
ロンジン ヘリテージ クラシック L2.828.4.73.0
Longines ロンジン ヘリテージ クラシック L2.828.4.73.0 を見る
おー、レトロだ。古びた駅にある掛時計みたいな。
ええ。ロンジンというスイスのブランドで27万8300円(税込)です。目盛りがはっきりしていて見やすいし、シンプルにまとまっていますよね。1930年代によく作られていたデザインを落とし込んだものです。リストショットも見てみましょう。
Longines ロンジン ヘリテージ クラシック L2.828.4.73.0 を見る
あっ、いいですね。腕に着けた写真があるとイメージが湧きやすいですね。ところでロンジン って、、、どんなブランドなんですか?
(拙稿「腕時計のすすめ【ロンジン】マスターコレクションクロノグラフ L2.673.4.51.6」参照)
「だった」って言うと、今は違うんですか?
汎用ムーブメントって、要は自社製じゃないということだと思うんですが、それってよくないんでしょうか?
汎用ムーブメントは、専門メーカーらが、ながーい歳月をかけてトライ・エラーを繰り返してブラッシュアップしてきた物です。なので当然、実用製品としてはよくできており、品質性能は安定しており、信頼性も高いのです。それに、市場に出回っている量が圧倒的に多いですから、言えば町の時計屋さんでも修理可能です。それに汎用ムーブメントだと時計の価格が抑えられるのでコスパもGoodです。
汎用ムーブメントだとどうして安いのでしょうか。
汎用ムーブメントは大量生産されているし、ムーブメントに凝った装飾もされていないので加工費人件費もカットできますので。他方で、超高級機に期待されるのは目で見てうっとりするような芸術性ですよね。それに汎用ムーブメントが載っていたら「違うだろ」ってなりますよね。要は、その時計の目的に応じて自社製なのか汎用でいいのかメーカーが使い分ければいいんであってね。
(hodinkee.jp「“雲上ブランドにETAムーブメントは許されるのか?”(読者からの質問に回答)」参照)
なるほど。自社製、汎用ムーブメントって上司が何か言っていたように思いますが、そういう話だったのですね。僕は今の話を聞いたら汎用ムーブメントで全然問題ないと思いました。レトロな感じの時計で他には何かありますか?
次はこちらを、、、
ボーム&メルシエ Classima 10214
これまたレトロだ。何というブランドですか?
創業1830年?!びっくりです、、、
僕は機械が好きなんで裏側がスケルトンっていうのもいいですね。最後にもう一つ紹介していただけますか?
では最後に。こちらです、、、
ノモス オリオン 38 ホワイト OR1A3SW238
おっ、これは上の二つと比べると一層シンプルだ。
このデザインはかなり洗練されていると思いますね。お値段は31万9000円(税込)と少し予算オーバーですが、、、
それくらいならOKです。これは何というブランドですか?
バウハウスって何ですか?
(拙稿「時計屋放浪記【ユンハンス】マックスビル バイ ユンハンス クロノスコープ」参照)
(germanwatch.jp「機能主義の精神はどのように影響したのか バウハウスデザインと ドイツ時計」参照)
具体的にはどんな考え方ですか?
建築や工業製品のデザインを感性や直感で行うのではなく、理屈立てて行う。つまり機能と形態を結びつけてデザインを理論的体系的に学ぶという理念です。その中から出てきた考え方が「機能美」。物のデザインは機能から導く。使うことを第一に考えるデザインですね。リストショットを、、、
これはイイ!
直径38mmです。このサイズ感はスーツスタイルにぴったりです。
(拙稿「機械式腕時計のサイズ(直径)」参照)
それとデザインがいいです。最近はデザインがごちゃごちゃした時計、「それ時計なの」って突っ込みたくなる時計をよく見るようになりました。私自身は余りごちゃごちゃした時計は好きではないですね。時計はあくまで脇役ですから、時計がコーディネートの中で一番強く出てくるのは何か違うと思うんです。特にスーツスタイルではね。
なるほど。まさに無駄がないし、もう時計以外の何物でもないですよね。これが機能美ということですか、、、
裏側はシースルーになっています。
これこれ。このメカ感がたまりません!!
D男さんにはノモスがいいかもしれませんね。流行り廃りとは無縁の普遍的なデザインですから。
(ノモスはペアウオッチとしても使える。拙稿「ペアウオッチ【ノモス グラスヒュッテ】タンジェント 38 ミッドナイトブルー Ref.167 TN1A1W238」参照)
はい!ありがとうございました。
30万円というと、僕にとってはかなり大きな買い物なので、しばらくじっくり考えてみたいと思います。
そうですよ。それに今日紹介した時計は、たくさんある中の3つですから。これをヒントに自分にピッタリの時計を見つけてください。
ありがとうございました。