ドレスウオッチを選ぶのは難しいという話をした。
カラトラバ5196及びこれに範を取ったと解される系統はズシッとしたイメージだが、これと異なり、次はシュッとしたイメージのドレスウオッチを見て行こうと思う。
- ヴァシュロンコンスタンタン(パトリモニー)
- オーデマ・ピゲ(ジュールオーデマ エクストラシン)
- ブランパン(ヴィルレ)
- ピアジェ(アルティプラノ)
- ジラールペルゴ(1966)
- IWC(ポートフィノ・オートマティック)
ヴァシュロンコンスタンタン(パトリモニー)
ヴァシュロンコンスタンタン パトリモニー マニュアルワインディング
Ref.81180/000J-9118 価格209万4400円(税込)
腕時計の究極系である「二針」ドレスウオッチといえば、これ。
雲上ブランドの一つ。手巻きだ。40mm径、6.79mm厚。
注目は時分針。スーッと細い。アワーインデックスも外から内にスーッと伸びている。
カラトラバ5196(パテックフィリップ)やトラディショナル(ヴァシュロンコンスタンタン)よりも、軽やかなイメージだ。
針の形は先がやや尖っているので(細い)ペンシル針に分類できるだろう。
ラグとケースは独立した感じの構造になっており、カラトラバ5196とはおそらく意図的に異なるデザインコードを採用していることが分かる。
カラトラバ5196等で採用されているのは重厚なドフィーヌ針。これが少し重いと感じる人は、パトリモニーを検討されてはどうか。
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オーデマ・ピゲ(ジュールオーデマ エクストラシン)
オーデマ・ピゲ ジュールオーデマ エクストラシン
REF. #15180OR.OO.A088CR.01
価格2万6400ユーロ(1ユーロ120円とすれば日本円で316万8000円)
雲上ブランドの一つ。
こちらは自動巻き。二針時計でこの価格はえげつないが、「世界で最も美しい自動巻きムーブメント」と称されていて、分かる人には分かるというもの。
41mm径はやや大きさを感じるが、自動巻きで6.7mm厚という驚異的な薄さだ。
針は葉をモチーフにしたリーフ針の一種に分類できるだろう。
パトリモニーはアワーインデックスの間にドットの分目盛りがあったが、こちらはそれも排除しシンプルを極めている。
こちらもラグとケースとは独立的に造形されている。
パトリモニーに比べると針の形に滑らかな動きがあって表情はより柔らかい。
なお、拙稿「腕時計のすすめ【オーデマピゲ】ジュール オーデマ エクストラ シン REF. #15180OR.OO.A088CR.01」参照。
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ブランパン(ヴィルレ)
ブランパン ヴィルレ Ultraplate Ref.6605 3642 55 価格196万9000円(税込)
ブランパンは世界最古の時計ブランドとして、また機械式腕時計ブーム復興の立役者として高いプレゼンスがある。
40mm径の7.39mm厚。
こちらも針はリーフ針。中がくり抜かれているのがデザインのポイント。
こちらもラグとケースとは独立的に造形されている。
あとはアワーインデックスがバーではなくローマ数字になっているのも、パトリモニーやジュールオーデマとは異なるポイント。
シンプルな二針の文字盤に落とし込まれたローマ数字はエレガントさが一層引き立って見える。
なお、拙稿「時計屋放浪記【ブランパン】ヴィルレ ウルトラスリム Reference: 6605 1127 55」参照。
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ピアジェ(アルティプラノ)
ピアジェ アルティプラノ Ref.G0A31114 価格185万6800円(税込)
いままで見てきたパトリモニー、ジュールオーデマ、ヴィルレと比べると、デザインが全体的に直線的で、これがアルティプラノデザインのイカしているポイントだ。
38mm径に6.4mm厚という驚異的な薄型時計。
文字盤の情報が極端に少ない分「PIAGET」のイカしたロゴが引き立っている。
なお、拙稿「腕時計のすすめ【ピアジェ】PIAGET アルティプラノ ALTIPLANO Ref.G0A38131」参照。
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ジラールペルゴ(1966)
ジラールペルゴ 1966 Ref.49555-52-132-BB60
価格1万7100スイスフラン(1スイスフラン=111円とすれば日本円で189万8100円)
三針・デイトで、これまで見てきたものよりも機能が増えてしまっているが、デザインコードは共通するものがあるので一応触れておきたい。
よく観察すると、これまで見てきたモデルと比較して、ラグが短く作られていることに気付く。
この価格帯ではパトリモニー、ブランパン、アルティプラノと当然に競合するわけだが、これらに勝つには何か足りない。
いや、足りないのではなく、多いのかもしれない。
このモデルにデイト機能は不要と感じるし、そもそも「AUTOMATIC」などという表記がこのモデルに要るだろうか。
「シンプル」という路線でフルスイングできていないから、パトリモニーなどと比べるとどうしても微妙に感じてしまう。
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IWC(ポートフィノ・オートマティック)
IWC ポートフィノ・オートマティック Ref.IW356504
価格129万8000円(税込)
ロレックスやオメガと競合するIWCの時計。
40mm径に、自動巻きで9.2mm厚と、サイズ感は丁度よくまとまっている。
ラグの造形はアルティプラノばりの直線系だ。これとリーフ針の組み合わせも悪くない。
ただ、パトリモニーやジュールオーデマ、アルティプラノといった超シンプルなドレスウオッチを見てきたせいか、分目盛りは良いとしても外周の5、10・・・というアラビア数字の併記が蛇足に感じてしまうのは筆者だけか。
ジラールペルゴの1966でも述べたが「AUTOMATIC」もやっぱり邪魔に感じる。
分目盛りのアラビア数字、デイト機能、AUTOMATICの表記をすべて消してもう少し価格を落とせば、パトリモニーやジュールオーデマは高すぎるけどそういう系統の時計が欲しいと考えている層に十分アプローチできる魅力的なものになる気がするのだが。
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以上、パトリモニーを軸にドレスウオッチを見てきたが、気に入ったモデルはあっただろうか。