そろそろドレスウオッチが欲しいと思いはじめたそこのあなた。
いざドレスウオッチを選ぼうと思ってもかなり難しい。
ドレスウオッチは既に完成された「型」があるし、シンプルであるほど他との差別化が困難になってくるからだ。
平たく言えばブランドの違いを除けば「みんな同じに見える・・・」。
しかしよく観察すれば細かい相違点があり、確認していこうと思う。
- パテックフィリップ(カラトラバ 5196J)
- ヴァシュロンコンスタンタン(トラディショナル)
- ジャガールクルト(マスター・ウルトラスリム)
- グランドセイコー(エレガンスコレクション SBGW)
- カール・F・ブヘラ(マネロ ペリフェラル)
- まとめ
パテックフィリップ(カラトラバ 5196J)
パテックフィリップ カラトラバ 5196J 価格240万9000円(税込)
ドレスウオッチの世界最高峰。
三針、スモールセコンド、手巻き、18Kゴールド製。37mmのケースにシャープなドフィーヌ針、立体的なバーインデックス。
厚さ7.68mm。
これぞ王道のドレスウオッチ。
ケースとラグが流れるように一体化されたフォルムは美しい。
完璧過ぎてこれ以上言うことがない。
今回はカラトラバ5196と機能・デザイン面で比較できそうなモデルを見ていきたい。
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ヴァシュロンコンスタンタン(トラディショナル)
ヴァシュロンコンスタンタン トラディショナル・マニュアルワインディング
Ref.82172/000R-9382
価格224万4000円(税込)
パテックフィリップと並ぶ雲上ブランドの一つ。
カラトラバ5196と格式面でも張り合える時計が存在するとすればこのモデルだけだろう。
三針、スモールセコンド、手巻き、18Kゴールド製、シャープなドフィーヌ針、立体的なバーインデックス。
と、ここまではカラトラバ5196と同じ。細かいが12時のインデックスが二本になっているのも同じ。
違いを見ていこう。
ケースは38mm、7.77mm厚とカラトラバより1mm大きく0.09mm厚い。
見た目の最大の違いは分目盛りがレイルウェイデザインになっている点。
カラトラバ5196の分目盛りはドットだ。
カラトラバ5196よりも文字盤の表情は引き締まって見える。
12時のインデックスは少し違う。
トラディショナルの方は上部がV字型にカットされている。
これはブランドロゴのマルタ十字をモチーフにしたデザインだろう。
全般的にインデックスの形状も異なる。
カラトラバ5196は山型にカットされており、トラディショナルは台形型にカットされている。
そしてラグの造形だ。
カラトラバ5196はケースから流れるような一体性が特徴だが、トラディショナルはラグがほぼ真っすぐに立っていて、かつ、やや長い。
ここはカラトラバ5196のデザインコードと一線を画している重要なポイントだ。
カラトラバ5196とは異なりスモールセコンドに独立したインダイヤルが与えられている点、スモールセコンドのインダイヤルにもレイルウェイ目盛りが施されている点で、スモールセコンド部分が強調され過ぎていると感じるかどうか、好みが分かれるポイントだろう。
カラトラバ5196はソリッドケースバックだが、トラディショナルの方はシースルーバック仕様になっている。
ここは時計を外した時にしか分からないが、ムーブメントが鑑賞できる点は時計好きには大きいポイントだ。
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ジャガールクルト(マスター・ウルトラスリム)
ジャガールクルト マスター・ウルトラスリム・スモールセコンド
Ref.1212510 価格161万9200円(税込)
ラグとケースの造形は流れる一体構造。
全体的なデザインも含めてカラトラバ5196に範を取っていることが読み取れる。
ウルトラスリムもドフィーヌ針だが、カラトラバ5196やトラディショナルとは異なり、ダイヤル中心の針の付け根の部分は丸くなっているのが特徴だ。
ケースは39mm、厚さ8.1mmとカラトラバ5196やトラディショナルよりやや大きめ(このモデルは自動巻きだ)。
トラディショナルと同じくシースルーバック仕様になっているのは嬉しいポイント。
スモールセコンドのインダイヤルは一段低くなっている。
分目盛りにはカラトラバ5196と同様ドットが用いられている。
しかし、カラトラバ5196はアワーインデックスの周りにまでドットが施されているのに対して、ウルトラスリムの方はアワーインデックスの部分にはドットがないという細かい違いもある。
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グランドセイコー(エレガンスコレクション SBGW)
グランドセイコー エレガンスコレクション SBGW 価格159万5000円(税込)
ケースは37.3mm、11.6mmと厚みはやや気になる。
アワーインデックスは一見カラトラバ5196のようだ。
もっとも、カラトラバ5196の方はダイヤルの内側に向けて鉛筆のように鋭くなっているが、SBGWは四角い。
また12時のほか3時、6時、9時のインデックスも二本になっている。
それに時針はこれまで見てきた三点とは異なり、やや短く、太く見える(正確に計ったわけではなく視覚的な印象だが)。
分目盛りは短い線で味気ないように感じるが、重厚なバーインデックスを邪魔しない絶妙なデザインだと思う。
これらの点で、カラトラバ5196などと比べて、重厚、安定といった印象をより強く受ける。
裏ぶたはトラディショナル、ウルトラスリムと同じくシースルーバック仕様なのも嬉しい。
パワーリザーブはカラトラバ5196で44時間、トラディショナルで65時間だがこのSBGWは72時間。
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カール・F・ブヘラ(マネロ ペリフェラル)
カール・F・ブヘラ マネロ ペリフェラル Ref.00.10917.03.23.01
価格1万6600ドル(1ドル110円とすれば日本円で182万6000円)
直径40.6mm、厚さ11.20mmのサイズ感。ペリフェラル式の自動巻きだ。
カラトラバ5196と比べると、より一層、ラグがより流れるように、滑らかにケースと一体化されている。
アワーインデックスはジャガールクルトのウルトラスリムよりももう少し鋭く見える。
カラトラバ5196やジャガールクルトのウルトラスリムといったモデルからエッセンスを引っ張ってきているように思われるが、筆者はこのデザインのバランス感は良いと思う。
なお、拙稿「腕時計のすすめ【カール F. ブヘラ】マネロ ペリフェラル Ref.00.10917.08.23.21」参照。
まとめ
以上、カラトラバ5196を軸にドレスウオッチ4つを比較検討してきた。
カラトラバ5196は王者、あらゆる点で魅力的だが、唯一、シースルーバックでない点が受け入れられるかどうか。ここが引っ掛かる人はヴァシュロンのトラディショナルはかなり有力な候補になるだろう。
ジャガールクルトのウルトラスリムと、GSのSBGWは、価格面でもブランドステータス面でもスペック面でも甲乙つけ難い。
カール・F・ブヘラのマネロはこういった系統に属するデザインだが、ブランド的知名度は高くないので玄人向け。
考えだすと難しいのがドレスウオッチ選びだ。