A.ランゲ&ゾーネの歴史・ストーリーについての前回記事のつづきです。
新生A.ランゲ&ゾーネは、「ランゲ1」のリリースにより再興を果たしました。
https://www.alange-soehne.com/ja/node/911
ランゲ1です。
1時位置には、「アウトサイズ・デイト」と呼ばれる日付表示があります。
どこかで見覚えがありませんか。
そうです、ランゲがパリ~英国~スイスでの修行旅を終えてドイツに戻ってから手掛けたとされる「ゼンパー・オーパー(州立歌劇場)の5分時計」をモチーフにしたデザインです。
ブランドストーリーをきっちり形に落とし込んでいます。
3時位置には、パワーリザーブがあります。
ランゲ1は、ジャガールクルトの手巻き式であるCal.822をベースにしており(同ムーブメントの開発者を招聘しています)、手巻き時計(腕の動きで自動的に巻き上げるシステムではない)です。
5時位置には、スモールセコンド(秒針)があり、9時位置には、時分針が配置されています。
ところで、ランゲ1は、丸型ケースの時計であるのに、なぜ角形時計に搭載されるジャガールクルトのCal.822をベースにしている点を不思議に思われたかもしれません。
実は角形ムーブメントを用いてできるスペースを利用することでこの独特な配置を可能にしたものです。
https://oceans.tokyo.jp/watch/2019-0608-6/
デザイン面では、IWCのポルトギーゼのデザイナーが担当したこともあってか、1993年に発表されたIWCのポルトギーゼと似ている雰囲気もありつつ、しかし、全く異なるデザインの概念が採用されています。
秀逸なのは、文字盤上にこれだけの機構が所狭しと配置されているのに、ごちゃごちゃ感はなく、むしろ、とても洗練された美を感じます。
またの機会に触れますが、美しいと感じるのには理論的な理由があります。
このように、まさに4代目ランゲが意図したとおり、伝統を受け継ぎつつ「新たなる規範を確立するような時計」が完成しました。
(完)
※本記事は「ドイツ腕時計№3 ジャーマンウオッチバイブル」(シーズファクトリー・2015年)116頁(K.KITAMURA執筆)を参考にしています。